中国のことわざでは、男性すべてに痔があるそうです。
女性でも妊娠・出産の経験があればやはり痔で悩む方が多いようです。
しかしながら、これ程身近な病気であるにもかかわらず話題になることが少ないのは、その発生部位が肛門であること、あるいは悪性疾患(いわゆる癌)ではないことなどが原因なのでしょうか。
ところで、痔と一口に言っても世間一般では、いぼ痔・痔ろう・切れ痔とその名称は様々でありますが、これらを医学的な言葉に換えると痔核(ジカク)・痔瘻(ジロウ)・裂肛(レッコウ)となります。
それぞれ異なった病態ですが、紙面の問題もありますので今回は痔核(いぼ痔)について書いてみます。
図にしめしたように、肛門の中には歯状線というものが存在しますが、この線を境にして上下で全く性格が違います。
湘南すずきクリニク(健康ニュース) へのリンク湘南すずきクリニク(健康ニュース) へのリンク上は直腸で下は皮膚の特徴を持っています。例えば、上は痛みに鈍感なのに対して下は非常に敏感です。このため、痔核も上方に出来たものを内痔核・下方に出来たものを外痔核と区別しています。(図参照)
○便秘の予防:肛門への負担が減ります。
○よく噛むこと:これは消化吸収の良くない便は、でんぷんが多く「のり状」となるので肛門周囲が汚れます。
○水分を多く摂る:便が軟らかくなる。
○繊維を多く摂る:生野菜の少量では不十分。
○脂肪は便が軟らかくなりますが、肥満に注意。香辛料は適量なら問題なし。
○排便習慣:怒責を少なくし、短時間で排便することが肝要です。
○風呂:肛門の血流を促進するとともに、局所の衛生にもなります。痔の悪化時に入浴すると、意外なほど好転するケースが少なくありません。
痔核結さつ器
結さつ後(肛門部)
不幸にして痔核となった場合の治療法ですが、これは前記の生活指導を守る事と下剤の使用だと考えます。
しかしながら、下剤の乱用により下痢が続けば当然痔核は悪化するわけですから、適量であることに留意して下さい。
また、市販薬の中にも坐薬が増えていますが、これは肛門の腫れや痛みを軽減するものですので、常に排便習慣を正常化する努力無くしては、痔の再発に結びつくのでご用心。
◆痔の状態は次の4期に分類されます。
一期:内痔核のみの状態。痛み無く出血のみの状態。
二期:炎症が歯状線を越えて広がった状態。出血と共に、痛み・腫れが出現します。
三期:痔が肛門から脱出する状態ですが、指で簡単に押し込める。
四期:完全に飛びだした状態で、元に戻らない。
一般に、三〜四期になると手術を勧められますが、肛門括約筋を損傷することが多く、失禁の原因となることがあります。
当クリニックでは、上の図のような痔核結紮器で痔核に輪ゴムをかけています。
この手技は約5〜6分の無痛処置ですし、一週間後には痔核が壊死して落ちて完治します。